ICソケット・技術情報
高加速寿命試験 HAST(High Accelerated Stress Test)の特徴と仕組みについて解説
2024.07.1
HAST試験とは
高加速寿命試験試験(HAST試験)とは、半導体デバイスや電子部品の信頼性評価のために用いられる加速試験法であり、高温・高湿度環境における製品の耐久性を短時間で確認するために使われます。
HAST試験の特徴について
1.高温高湿環境
HAST試験では、試験室内を高温高湿の状態にします。通常温度は100度以上、湿度は90%以上に設定することで通常の使用条件では数年かかる劣化や故障を数日から数週間で再現することが可能です。
2. 圧力変化
HAST試験では、通常の温度・湿度試験と異なり、加圧環境も加えることによって圧力の変動が製品に及ぼす影響を模倣し、試験時間をさらに短縮することで製品の耐圧性能も評価できます。
3. 加速寿命評価
加速度評価を考慮したデータから、試験結果から実際の使用環境における製品の寿命を予測して信頼性を評価することが可能です。
4.故障モードの検出
半導体を長期的に使用していると発生する電気的な故障、材料の劣化や接合部の腐食などをHAST試験の時間短縮によって早期発見できることがメリットになります。
HAST試験の仕組みについて
1.試験装置
HAST試験は、専用のHASTチャンバー(試験装置)で行われます。このチャンバーは、温度、湿度、圧力を制御できるように設計されています。
2.温度制御
チャンバー内の温度は110℃〜130℃に設定されます。高温環境により、製品の加速劣化を促進します。
相対湿度(RH)は85%RH以上に設定されます。高湿度環境は、特に電子部品の腐食や絶縁劣化を引き起こしやすくします。
3.圧力制御
チャンバー内の圧力は通常2気圧程度に設定されます。加圧環境により、湿気の浸透が促進され、試験時間を短縮できます。
4.製品の配置
試験対象の製品は、チャンバー内に均等に配置されます。製品は動作状態にすることが多く、通電しながら試験を行うこともあります。
5.試験時間
試験時間は24時間から96時間程度ですが、試験条件や目的により変わることがあります。
HAST試験の原理
HAST試験の原理は、製品に対して極端な環境ストレスを与えることで、通常使用条件下では発生しにくい初期故障や潜在的な欠陥を短期間で顕在化させることにあります。以下にその原理を詳しく説明します
1.加速劣化
高温は化学反応速度を上昇させるため、製品内の劣化メカニズム(例:腐食、酸化、絶縁劣化)が加速されます。これにより、通常使用条件下で長期間かかる劣化が短時間で進行します。
2.湿度の影響
高湿度環境は、水分が製品内部に浸透しやすくなります。これにより、腐食や絶縁破壊などの湿度に関連する故障メカニズムが顕在化します。
3.圧力の影響
加圧環境は湿気の浸透をさらに促進します。圧力が高いと、湿度が製品内部に迅速に浸透し、内部構造の劣化や欠陥を早期に発見できます。
4.故障メカニズムの発見
上記の環境ストレスにより、製品の弱点や潜在的な欠陥が短期間で発現します。これにより、製品の設計や製造プロセスの改良が可能になります。
HAST(不飽和プレッシャークッカ)試験と
PCT(プレッシャークッカ)試験の違い
ここで混同しやすいHAST試験とPCT試験の違いについて紹介します。
こちらは双方ともに、小型電子機器の信頼性評価試験方法です。双方、高温・高湿・加圧条件を用いる点で共通していますが、目的、試験条件、方法、評価対象などにおいていくつかの重要な違いがあります。
HASTは主に電子部品を高温高湿の不飽和加圧水蒸気状態の環境で評価することによって、短期的に劣化メカニズムを顕在化させることが可能です。一方、PCTは材料やパッケージの開封性や耐久性を評価するために、高温の飽和加圧水蒸気状態でHASTよりもさらに高加速で特性劣化を検証することが可能な試験方法です。
まとめ
上記の通り、HAST試験は早期不良検出、寿命予測、信頼性向上において重要な役割を果たしています。
HAST試験と半導体テストソケットは、デバイスの信頼性評価において密接に関連しています。テストソケットは、HAST試験の際にデバイスを接続し、電気的特性を測定するために不可欠な要素です。両者の適切な使用により、半導体デバイスの品質と信頼性を高めることができます。ICソケットのお困りごとはエンプラスまでご連絡ください!
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